暗い部屋にはテーブルがひとつ。週に一度、会社帰りの男たちはここに集う。
彼らは静かにテーブルを囲み、密かなる会談にふける。そして、今宵も・・・

密  談

Part 8

 上村「プロバイダってなんだか知ってるか?」
 江森「なんだそりゃ」
 大竹「あ、おれ知ってる」
 上村「言ってみろよ」
 大竹「なんかな、インターネットなんだよ」
 江森「インターネットのなんなんだよ」
 大竹「・・・・・さあ」
 江森「なんだよ結局知らないんじゃないかよ」
 大竹「おまえはインターネットの用語ってことすら知らなかっただろう」
 江森「おまえとたいして変わらないじゃないか」
 上村「おいおい、もう少し落ち着けよ」
 江森「おまえ、知ってるって言うのか? 上村」
 上村「知らん」
 大竹「なんだ」
 上村「いやな、今日の昼休みにさあ、赤石の奴が自慢してたんだよ。 パソコン買ったとかなんとか言って」
 大竹「赤石ってあの赤石か?」
 江森「ちょっと髪の毛の薄い」
 上村「そうそう、前に一度会ったことあるだろう。 あいつがさあ、そんでもって言うんだよ、『プロバイダをどこにしたらいいと思う?』なんて」
 大竹「で、なんて答えたの?」
 上村「沢山あるから迷うよなぁって」
 江森「なるほど」
 大竹「まあ無難だな」
 上村「とりあえずその場はしのいだけれど、 おれも悔しいから早速本屋に行って調べてみることにしたんだ」
 江森「うん」
 上村「そしたら驚いたよ。コンピュータ系の雑誌が目茶苦茶沢山あるんだよ。 おれもうどれ読んだらいいかわからなくて」
 大竹「で、結局帰ったわけか」
 上村「いやいや、とりあえず適当なのをひとつ読んでみたんだ。 そしたらもう中身がちんぷんかんぷん、知らない単語のオンパレード」
 江森「例えば?」
 上村「ネットサーフィン」
 江森「・・・・・」
 大竹「新しいスポーツだな、きっと。若者の間で流行ってるんだろう」

Part 9

 大竹「いま、松坂が大人気だな」
 江森「西武の新人だろ」
 上村「あれはどうだろう」
 大竹「注目しすぎ。他の選手がかわいそうだ」
 江森「怪物くんなんて言われたりしてな」
 上村「怪物くんはないよな。なんか妖怪呼ばわりじゃないか」
 大竹「巨人の松井がゴジラってのは、顔見りゃわかるけどさぁ」
 江森「怪物くんだと、次々に顔が変わるみたいな言い方だよな」
 上村「いいや」
 大竹「江森は、アニメの見すぎ」
 江森「あれ?」
 上村「しかし、高校卒業したばかりであれだけちやほやされると、 将来生意気な男になりそうだな」
 江森「確かに、芸能界でも子役からいる奴って生意気そうだしな」
 大竹「安達裕実とかな」
 上村「子供相手にまわりの大人がよいしょするから、どんどん天狗になってゆく」
 大竹「とにかく最近、礼儀を知らない若造が多いみたいだな。 まあ、それは芸能界に限らずだけどさ」
 江森「前田愛なんか将来どうなるのか・・・」
 大竹「若いうちからすでに極めてしまったなんて思われたら大変だな」
 上村「絶対、松坂は天狗だろう」
 大竹「投げてる姿もなんか、気合い入ってないんだよなアイツ」
 江森「一回、めった打ちにされてみればいいんじゃないか」
 上村「しかしこのあいだ、テレビで言ってたんだよアイツ 『プロは負けても次がありますから』って。ぶん殴ってやろうかと思ったよ」
 江森「すでに生意気さの片鱗が!って感じだな」
 大竹「なんかだんだん腹が立ってきた」
 江森「おれも」
 上村「単なるひがみじゃないか?」

Part 10

 上村「おれたちの抱えていた今世紀最大の悩み・・・・『バイキングの謎』がついに解けたぞ」
 江森「マジかよ・・・」
 大竹「あの、並べられた料理の中から、自分の好きな料理を好きなだけ選んで食べる食事方式が、 なぜにバイキングと呼ばれるのかを、ついに突き止めたのか?」
 上村「ああ」
 江森「言ってみろよ」
 上村「これがまた、知ってがっかりだよ。 おれたちはそんなことのために、幾度も話し合ってきたのかって」
 江森「いいからはやく教えてくれよ」
 上村「おれたちの睨んでいた通り、鍵は北欧にあった・・・と言えなくもない」
 江森「それじゃあ、やっぱり・・・」
 上村「いや、バイキング料理というのは日本独特のものだ。 他のどこの国へ行ってもそんなものは存在しない」
 江森「なんだって!」
 上村「16世紀頃、スウェーデンで誕生したパーティー料理に 『スメルゴスボード』というものがあるらしんだが、 実はこれこそが日本のバイキング料理のヒントになっていたらしい」
 大竹「スメル・・・何?」
 上村「酢漬けニシンやスモーク・サーモン、タラのフライ、グラタン、チーズ、 そしてパンなどをテーブルに並べて、それを自由に取り分けて食べる。 これが『スメルゴスボード』だ」
 江森「もしかしてそれが海賊たちの食事だったとか」
 上村「それが違うんだ。この料理は、バイキング・・いわゆる海賊とはまったく関係がない」
 大竹「それじゃあ、そこからどういった経緯でバイキングになったのさ」
 上村「この謎の最もアホらしいところは、そこなんだ」
江森「勿体振るなよ」
 上村「日本のあるレストランがその『スメルゴスボード』の 自由に取って食べる方式だけを借用した結果が日本におけるバイキング料理の誕生だ。 その際、『スメルゴスボード』が北欧の料理だったため、 『北欧といばバイキングだ』という安易な考え方からバイキング料理と命名された」
 江森「なんだよそれ・・・がっかりだな」
 上村「ただし、このネーミングにはもうひとつの意味合いも込められていたらしい」
大竹「もうひとつの意味合い?」
 上村「バイキング(海賊)のように豪快に食べられる」
 大竹「・・・・・」
 江森「・・・・・」
 上村「つまらないだろ」

Part 11

 上村「織田裕二がDOCOMOからIDOに切り替えただろ」
 江森「あれには驚かされたな」
 上村「大丈夫なのか、あれ。大竹、同じ広告業界として何か知ってるか」
 大竹「一応、トラブルはなかったみたいだけど」
 江森「なぜだよ」
 大竹「DOCOMOとは契約が切れたからだよ」
 上村「いくら契約が切れたからって、間をおかずにだろう。前代未聞じゃないか」
 大竹「ルールとしては全く問題なしだ。あとはマナーというかモラルというか、 倫理の問題だろう」
 江森「織田裕二は倫理的に問題なのか」
 大竹「そういう訳じゃない、彼はDOCOMOとは穏便だったと主張してるし、 よく考えれば彼に仕事を持ちかけたIDOの方がすごいと思う」
 江森「確かに」
 大竹「それに全く別のものとして考えてるらしい、 今までの携帯電話とIDOのcdmaOneは」
 上村「違うのか?」
 大竹「おれもよく分からないけど、違うものとして位置付けしてるらしい。 音が断然良いみたいだし」
 上村「この前タクシーに乗ったらあったよ、cdmaOne。 ぜひ確かめてくださいというような感じで」
 江森「へえ」
 大竹「まあ、くわしいところは分からないけど、DOCOMOにしてみれば、 全然気にしてないみたいだよ。今回の件」
 江森「それならいいけど他人事ながら冷や冷やしたよ」
 上村「いくらおれたちが心配したところで何にもならないしな」
 江森「IDOはいいどー。みたいな」
 大竹「お前、帰れよ」
 江森「悪かったよ、誤るよ」

Part 12

 上村「鶏が朝に鳴くのは何故だと思う?」
 大竹「なんだよ、また鶏の話かよ」
 上村「まあいいから聞けよ」
 江森「なんで朝鳴くんだよ」
 上村「普通、多くの鳥は、繁殖期によく鳴くんだけど、品種改良されてしまった鶏は、 そんな野生の習慣が薄れて、一年中鳴くようになってしまったんだ」
 江森「確かにあいつら、いつでも鳴いてる気がするけど、 それでも特に朝になると鳴くっていうのは何故なんだ」
 上村「簡単なことさ。夜は目が見えないから、いつ敵に襲われるか分からない。 だから、朝になると安心して、その喜びを表現しているのさ」
 大竹「そんなものか」
 上村「まあ、あくまでもそう言われてるだけだけど」
 大竹「江森はどうなんだよ、マメ知識。この前のマッチの話、おれ好きだけど」
 江森「そうだなあ・・・あ、あれなんかどうかな」
 上村「なんだよ」
 江森「マヨネーズって冷蔵庫に入れると傷みが早いんだ」
 大竹「江森、おまえ嘘はやめろよ」
 江森「本当さ。マヨネーズは、室温10〜30℃くらいでもっとも安定していて、 それ以上でも以下でも分離しやすくなるんだ。 酢の殺菌力は全体に行き渡らなくなるし、油は酸化するしで傷みが早くなる」
 上村「どうやら信じていいみたいだな」
 江森「というわけで、マヨネーズは日光の直接当たらないところに保存するのが一番。 まあ、夏場だったら冷蔵庫の野菜室あたりに袋詰めにして入れておけばいいんじゃないか」
 大竹「いいなあ、やっぱりおまえの知恵って。いつも参考になるよ」
 上村「おれ、家に帰ったらまっさきに冷蔵庫からマヨネーズを出そう」
 大竹「おれも、ちょっと面白い話があるんだけど」
 上村「聞こうじゃないか」
 大竹「サウナで抱き合うと涼しく感じるらしいんだ」
 江森「それ本当?」
 大竹「ほんと、ほんと。だって、あの中では体温の方が冷たいんだから。 今度試してみればわかるさ」
 上村「誰と?」
 大竹「そりゃあ・・・(赤面)」
 江森(赤面)
 上村(赤面)


参考
 『世界地理の恥をかかない雑学事典』草野仁(成美堂出版/成美文庫)
 『頭にやさしい雑学読本』竹内均 編(三笠書房/知的生きかた文庫)
 『火曜ファイル』4月13日OA(フジテレビ)
 『探偵ナイトスクープ』4月某日OA(朝日放送)